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『農業かごしま』に寄稿しました~屋久島ヴィータキッチンのマーケティング&パッケージデザイン事例。

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鹿児島県農業改良普及研究会が発行する『農業かごしま』令和4年11・12月号に寄稿しました。

お客様に選ばれるマーケティングシリーズ第4回

【事例】屋久島の農産物を活かした高付加価値商品を島外へ

株式会社STUDIO K 代表取締役/かごしま特産品研究所 研究員 中島秋津子

「屋久島ヴィータキッチン」は屋久島にあるレストランで、主に観光客など来島者が利用、代表の小林浩治・恵夫妻が二人で運営されています。

❶パスタブランド「屋久島パスタラボ」の盛り付けイメージ、屋久島・鹿児島食材を用いて開発
❷小売用商品、パスタ麺+ソース+トッピングのセット ❸レストラン「屋久島ヴィータキッチン」

1:食品製造へ挑戦した理由

世界自然遺産の島として、日本のみならず世界で知られた屋久島ですが、平成19年度をピークとして来島者数が減少傾向にあります。「来島を前提とした」レストラン事業に加え、「島外の人」を対象とする事業を開始する時期に初めてお会いしました。

2:アイデアを事業化

お二人には温めていたアイデアがありました。とある百貨店バイヤーから「看板メニューのパスタを商品化できないの?」と提案された経験があり、ご自宅でお楽しみいただけるよう、メニューをパッケージ化して販売する(図❷)というものです。

3:マーケティングの仕組み

仕組み①飲食店資産の活用

商品はメニューやレシピ、食材調達などの飲食店事業の資産を生かして企画したもので、例えば屋久鹿、にんにく、木の子、たんかん、バジル、飛び魚、車海老などの食材は、一つ一つ生産者を開拓して揃えてきた「屋久島印」の食材です。

仕組み②冷凍化でストック

飲食店メニューの商品化ではレトルトという方法もありますが、味の再現性を重視して冷凍を選択しました。加えて、手作りのソースであっても急な発注に応えやすく、レストランの閑散期を活用して準備することで作業の標準化も図れるという利点もあります。

仕組み③ブランディング

「おいしいご褒美」というコンセプトを象徴するものとして、ブランド名は「屋久島パスタラボ」、ロゴは屋久島の縄文杉や植生に着想を得た自然なラインで構成したデザインを提案、パンフレットや店頭ポップなど販促ツール(図❺)でも統一したビジュアルで展開しました。

仕組み④価格の意味を伝達

パスタ・サラダ・パン・ドリンクのセットで2千円代のメニューに対し、本商品は千円台後半と値付け。屋久島というブランドとその食材、手作りのソースなどの価値要素を踏まえたプライシングでしたが、類似品と比べると「高過ぎる」と言われることは目に見えてました。

そこで各対象者(図❽)に向け、コンセプトや調理方法、合わせるワイン等を紹介した大型パンフレット(図❹)を制作。パっと見で価格納得感が得られるよう戦略的に編集したものです。

平成29年の発売後、百貨店や専門店等への販路を開拓。当初目標とした高質スーパーで採用されたと連絡をもらった時は、本当に嬉しかったものです。

4:屋久島発商品も増加

最近ではパスタの卸先に向け、屋久島たんかんジュースをリ・ブランディングした商品(図❻❼)を提案、屋久島の魅力を島外に発信・発送し続けています。