食とデザイン調査レポート
レポート:No.001

家計調査に見る鹿児島~1:米・パン・麺類

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米価高止まりのニュースが続きます。鹿児島でのお米の消費ってどうなっているんだろう・・・ということで家計調査から、全52都市(全47都道府県の県庁所在地+政令指定都市)の中で「鹿児島市」の主食への支出状況をみるレポートです。県全体のデータではありませんが、何か特徴が見えるかも・・・。

※ベースとしたデータについてはページ下でご確認ください。

第1回は値上がりで注目があつまる米に加え、同じ穀類項目にある「米・パン・麺類」です。

1.穀類の中で最も支出が多いのは「パン」

穀類への支出(全国平均)

家計調査の中で穀類は「米、パン、麺類、その他穀類」で構成されています。

穀類全体の合計支出金額は82,646円で、そのうちパンが最も多33,660円、次いで米が22,473円、麺類が20,666円となっています。比率としては米27%:パン類51%:麺類25%。

米の比率が減少基調であることは知っていましたが3割以下とは・・・。麺類とほぼ同じですね。改めてパン・麺類のパワーを感じるデータです。

2.鹿児島市の米、パン、麺類への支出は?

鹿児島市の消費支出

鹿児島市の状況をみてみましょう。支出金額トータルでは78,657円。全国平均の82,646円に対して95%となっています。

支出額の順位としては、52都市のうち穀類は38位で、米15位・パン39位・麺類48位。米は中位、パン・麺類は下位となっています。

米は15位で全国平均より支出額も多く(対全国107%)、鹿児島市は昨今の米価の高騰の影響を受けやすいと言えるかもしれません

一方、麺類は52都市のうち48位。フェリーのうどんやら、そば茶屋さん、回るそうめん、鹿児島ラーメンなどなど、それなりに麺類の存在感・話題はあるように思うのですが、金額的にはかなり下位なんですね。

ここからは、米・パン・麺類について、他都市と比べながらデータをみてみましょう。

3.“ニュースな米”への支出は?

米への支出

米に対する支出金額および数量関する上位10都市ランキングです。

全体概況としては、福島市・新潟市・山形市・盛岡市・札幌市など米の産地に立地する都市が目立ちます。米食が盛ん、コメの美味しさを知ってる、良い米を買いやすい等の産地ならではの背景は要因の1つと言えそうです。

一方で秋田・宮城は米の生産量は多くとも、支出金額では上位にランクインしていません。産地以外の理由がありそうです。

他にも那覇市は輸送コストも要因の1つかもしれません。相模原市は都心のベッドタウンとして家庭内調理が多いなんていう言われ方をするようですが、明確なデータを探せませんでした。

そして鹿児島市は24,090円。全国平均に対して107%、多少多めのお金を使っています。数量的には26位なのでいわゆる単位あたりの価格が高い可能性があるのでしょうか。もう少し詳しくみたいところです。

4.パンは関西圏が強い!

パンへの支出

ずらりと並ぶ関西圏の都市。1位の神戸市を筆頭に、堺市・大津市・京都市・大阪市・和歌山市。金額上位10の中に6つの関西都市がランクインしています。

広島市・岡山市も関西に近く、関西・中国地方で強いパン!

鹿児島市は金額39位で、数量31位。単位あたりの金額が低めとわかります。

昨今都市圏中心に増えている素材・製法へのこだわりなど、高付加価値・高価格帯パンを取り扱う特徴あるパン屋さんは都市に早く出現し、「鹿児島には少ない」「やっとできた」と耳にすることも。各地域における(スーパー・コンビニではない)高付加価値パン屋さんの立地状況も要因の一つと言えそうです。

5.東北・北陸が強い麺類

麺類への支出

麺類の金額上位では、東日本勢が圧倒的に多く、わずかに「讃岐うどん」の高松市がランクインしているのみ。数量ベースには大阪市・相模原市等の顔ぶれも見えます。

上位の都市名を見ていると、「有名な麵料理」が浮かんできました。
山形市→冷やしラーメン
盛岡市→盛岡冷麺、じゃじゃ麺、わんこそば
青森市→津軽ラーメン、八戸ラーメン
秋田市→稲庭うどん
新潟市→へぎそば

もともと「温かい麺類は気温が低い地域で好まれる」と言われます。そのほか、東北など寒冷地では稲作が安定しない時に備えて、気候に合う蕎麦や雑穀などを栽培したり小麦を常用してきた歴史があるので、麺類が根付いた食文化なのかもしれません。

6.【まとめ】米・パン・麺類にみる鹿児島市の特徴

世帯人数を勘案してみると

これまでに見た米・パン・麺類への支出金額のデータは二人世帯以上が対象。ということは、世帯人数の影響もあるのでは・・・と上位10都市について、二人以上世帯の世帯人数(2024年)を調べて、一人あたり金額を出してみました。

一人あたり金額では、鹿児島市は
【米】全国平均と同じ=標準
【パン】全国平均より少ない
【麺類】全国平均より少ない
であり、一人あたり支出額でみると、「米の比重が強めではあるものの平均並み」とわかります。

そのほか、上位10都市については、
【米】相模原市、福井市・静岡市が上位
【パン】一人あたりで見ても神戸市が1位。神戸のパン好きは筋金入り。
【麺類】秋田市のみ9000円台!

秋田市の麺類について調べると、稲庭うどんの他、B級グルメで有名になった横手焼きそばもあり、ラーメン支出額でもトップクラス。著名な麺の幅も広い秋田県。秋田県は米の生産量も第3位(2023年)とトップクラスですが、麺類への支出が多いのですね。

主食だけに気候、食文化、産地、産地からの距離、店舗立地などさまざまな要因が絡んでいそうですね。今後も主食のデータは探してみて、複合的に見ていきたいと思います。

鹿児島市は、一人あたり支出額で見ると、
米は全国平均並み、パンは少額層、麺類は最少額層

今回はこれまで。

出典:総務庁総務局「家計調査」(二人以上の世帯) 
品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキング(2022年~2024年平均)
家計調査の1世帯当たり品目別年間支出金額及び購入数量(二人以上の世帯)のデータから、どのような品目でどの程度の地域差があるのかを明らかにするため、2022年~2024年平均の品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキングを集計しました。

※都道府県庁所在市以外の政令指定都市(川崎市、相模原市、浜松市、堺市及び北九州市)
※二人以上の世帯対象の名目支出

執筆者 中島秋津子

執筆者プロフィール

株式会社STUDIO K
代表取締役 中島秋津子

◯株式会社ベネッセコーポレーションでマーケティング・プロモーション・広告ディレクション・通信販売事業などの経験を経て、鹿児島に転居。
◯2007年STUDIO Kとして創業し、2014年に法人化。
◯「伝える力を会社と地域のエンジンに」という方針のもと、商品・サービスの魅力が「お客様に届き、より伝わりやすく」するサービスを、デザインと言葉の両面から提供。
◯趣味はウイスキー、エア野菜づくり。

<資格>PRSJ認定PRプランナー
中級食品表示診断士
食品生活アドバイザー(内閣総理大臣および経済産業大臣認定)