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十津川農場さんのデザインと技術の仕組みづくり:鹿児島のデザイン事務所の取り組み②

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【事例②】技術を知財で、認知をデザインで守り育てる仕組み

〔会社情報〕
農業生産法人 有限会社 十津川農場 肝属郡南大隅町根占横別府487-1 平成11年設立

①十津川農場の看板商品「ねじめびわ茶Ⓡ(ティーバッグ24包入)」
②ハウスで乾燥されるびわ葉 
③特許製法トルマリン石焙煎機
④びわの葉
⑤玉置 博祥代表
⑥パッケージ・デザインのビフォー/アフター
⑦会社ロゴマークのビフォー/アフター
⑧⑨「枇杷葉湯」に着想を得た、がじゅつ・甘茶・しなもんの葉をびわ茶にブレンドした「伝承びわ茶(商品とパンフレット)」

「ねじめびわ茶Ⓡ」は、十津川農場さんの看板商品で、県内一円、さらに県外やネットショップにも販路を拡大しています。

次の時代を予見した創業

南大隅町の自然に惚れ込んだ玉置社長が、鹿児島は「びわ」の生産量が多いこと、葉が漢方にも使用されることに着目。「21世紀はスローフードの時代になる」という考えから、平成11年、十津川農場が設立されました。

仕組み①知的財産を確立

十津川農場さんでは、産学共同研究を行い製法の特許を取得、ネーミングは商標登録されるなど商品の優位性を守る仕組みを早くから活用されています。愛され続ける「ねじめびわ茶Ⓡ」の礎と言える大切な仕組みです。
 リピート率が高いのも、びわ茶の原料提供が増えているのも、高い加工技術の賜物と言えます。

仕組み②売場対策デザイン

そして数年前、パッケージの規格変更に伴うデザイン・リニューアルのご相談をいただきました。とは言え、本商品はすでに多くのお客様に愛飲されており、大幅なデザイン変更では同一商品と認識されず、現在のお客様を失う可能性もあります。
お客様との出会い創出というパッケージの役割(下図)をどう果たすかが課題となりました。

そこでお客様が商品に対して抱くイメージや現状の課題を慎重に検討、例えばネーミングの文字サイズに強弱をつけるなど、着目率・情報取得率・購入率の改善に向けたブラッシュアップ型のリニューアルを行い、売場対策の一つとしました(図⑥)。

仕組み③ガイドライン整備

同時にデザイン・ガイドラインを整備。商品やパンフレット上でロゴの形や色のばらつきがあったことが理由です(図⑦)。
ロゴはブランドの顔。世界観を視覚的に表し記憶してもらう装置です。ブランドを記憶し、思い出し、指名買いしてもらうには統一性が欲しいところ。
会社の歴史やデザイン面での課題など、多面的な観点からデザインし直して使い方も明文化、統一性あるロゴ使用ができる基盤ができました。

仕組み④客層別の新商品

さらに商品開発にも積極的です。その一つは、江戸時代、江戸や京都の町で大流行した「枇杷葉湯」の復刻版をイメージした「伝承びわ茶」(図⑧⑨)です。
こちらは「ねじめびわ茶Ⓡ」とはまったく異なる、浮世絵を用いたデザイン。歴史性を背景に既存商品とは異なる層のお客様に選んでいただきたい狙いです。
弊社でも夏、冷蔵庫に常備しており、来社されたお客様に高評価、するりとした喉馴染みとほのかで安らぐ香りが評判です。

機能する売れる仕組み

スローフードの時代を予見して誕生した十津川農場さんは、お客様に選ばれるための仕組みが基盤となり、コロナ禍においても順調に増収されています。

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○鹿児島県発行『農業かごしま』(農業改良普及研究会)への寄稿記事の転載
~売れる仕組みづくり~お客様に選ばれるためのマーケティング~

プロフィール
中島秋津子
https://studiok-co.jp/
広島大学卒業後、㈱ベネッセコーポレーションに入社し、岡山本社・東京本部で編集・マーケティング・SP・法人営業・通信販売事業に携わる。2006年鹿児島に転居し創業。「伝える力を会社と地域のエンジンに」を使命にマーケティング&デザインサービスを事業者や自治体などに提供。鹿児島県商工会連合会が運営する天文館・かご市「かごしま特産品研究所」研究員。