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竜乃家さんの県外への販路開拓:鹿児島のデザイン事務所の取り組み①

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【事例①】販路開拓に必要な「作る力と伝える力」~竜乃家

〔会社情報〕
㈲竜乃家 鹿児島市吉野町1057-1 代表取締役 二見竜生 昭和51年創業・平成11年法人化

❶県外向けに開発した新商品「薩摩いこもち」
❷鹿児島市吉野にある店舗兼工場 
❸店舗の売場
❹二見社長と製造工場
❺包装前の既存いこもち
❻展示会出展時に製作した商談利用を想定したパンフレット
❼バイヤーの来訪増に備えてリニューアルしたホームページ
❽薩摩五羹(かるかん・いこ餅・小豆羹・木目羹・高麗餅)の旧パッケージ・デザイン
❾❿薩摩五羹の新パッケージ・デザイン

今回は「作る力と伝える力」の両面から県外向け販路開拓に取り組んだ、有限会社竜乃家さんの事例をご紹介します.

県外を視野に入れた5年前

竜乃家は加治木饅頭の製造小売として鹿児島市吉野で創業、現在はふくれ菓子・両棒餅・かるかん・いこ餅など郷土菓子を取り揃えています。
自社店舗や高速サービスエリア、スーパーなど県内中心の販売でしたが、5年前に県外販路開拓による事業の拡大と安定化を目標に掲げました。
ちょうどその時、募集があった鹿児島県主催・食品関連産業経営力アップ支援事業に二見社長が参加、パッケージデザイン担当の弊社とはそのプロジェクトで初めてお会いしました。

仕組み①対象別商品(県外向)

県外市場を目指す二見社長に「かるかんは県外でもある程度流通しており、他の商品はないか」と販路開拓コーディネーターから提案があり、「いこもち」を戦略商品として設定しました。
さらに「食べやすく一口サイズに」という助言を具現化するため、二見社長は試行錯誤の末、既存いこもち(写真❺❽)を小サイズ化する製法を編み出し、小さな丸型いこもち6個入の新商品を開発しました(写真❶)。
デザイン担当の弊社では、筆文字が多い和菓子売場で着目率を高めるロゴデザインを中心に、いこもちを知らない人でも買いたくなるパッケージをデザイン。
付加価値アップに伴い120円から140円と価格変更しました。

仕組み②情報提供その1

続いて会社を紹介するパンフレット製作に着手。商品だけではなく会社にも期待を集め、成約に結びつける狙いです。
そこで弊社では、「かりっ・ふわっ」など食感表現を主軸に、上質な商品の品ぞろえとその製造力を会社の強みとして視覚化しました(写真❻)。
 新商品と新パンフレットを携えて出展した展示会では、初参加にも関わらず商談が成立、大幅な売上増につながりました。

仕組み③情報提供その2

展示会で手応えを感じた二見社長は「バイヤーのホームページ来訪が増える」と考え抜本的なリニューアルを決定しました。
竜乃家の経営方針を「茶屋の精神」という言葉に象徴させ、会社理解の促進とブランドイメージ向上を実現(写真❼)、ネットショップ機能も装備しました。

仕組み④ブランディング

さらに「かごしま遊楽館人気№1」と雑誌掲載されたかるかんを始めとする看板商品の薩摩五羹を、特徴が見えにくいデザイン(写真❽)から、指名買いに結びつく上質感あるものにリニューアルしました(写真❾❿)。

竜乃家さんの「売れる仕組み」

元々お持ちの「おいしいものを作り続ける力」に「新しいお客様と出会う力」を仕組み①~④で総合的に強化してきたのが竜乃家さんの5年間です。
結果、コロナによる減収を県外の取引のリピート受注や新規開拓でカバーできたとのこと。
今後もこれらの仕組みが販路開拓の有機的な土台として効果を発揮することでしょう。

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○鹿児島県発行『農業かごしま』(農業改良普及研究会)への寄稿記事の転載
~売れる仕組みづくり~お客様に選ばれるためのマーケティング~

プロフィール
中島秋津子
https://studiok-co.jp/
広島大学卒業後、㈱ベネッセコーポレーションに入社し、岡山本社・東京本部で編集・マーケティング・SP・法人営業・通信販売事業に携わる。2006年鹿児島に転居し創業。「伝える力を会社と地域のエンジンに」を使命にマーケティング&デザインサービスを事業者や自治体などに提供。鹿児島県商工会連合会が運営する天文館・かご市「かごしま特産品研究所」研究員。