薩摩ファームブロストさんの関東市場開拓:鹿児島のデザイン事務所の取り組み④
【事例④】「焼豚」が抱える課題にアプローチして関東圏市場開拓
〔会社情報〕
株式会社薩摩ファームブロスト 日置市東市来町養母3340-1 畜産食品の製造・加工及び販売
❶一度食べるとリピーター化するブロストのしっとり焼豚
❷鹿児島県産豚をじっくりロースト
❸機械と人手でていねいに行うスライス
❹創業者の父から二代目を継承した代表取締役・野上敦史氏
❺❻販路開拓のために新しく制作した展示会ツール「タペスイトリーとPOP」
❼展示会での取り組み前後の様子
❽販路開拓にあたり会社と製造技術を伝えるために制作した会社案内
鹿児島県産豚の焼豚で好評を博しているのが、日置市を拠点とする㈱薩摩ファームブロストさんです。今回のケースは商品力を活かし、「商品ジャンル=焼豚」が抱える課題にアプローチしたマーケティング事例です。
良い原料を求めて鹿児島へ
関西で焼豚製造を始めた創業者が、おいしいものを作るには「原料の近くに」と考え、出身地の鹿児島県に会社移転したのが十数年前。現社長の野上敦史さんが、二十代の若さで代表職を継承、二代目として率いる勢いのある会社です。
展示会で課題発覚
もともと拠点があった関西圏にはお取引先が多く、手薄な関東圏での販路開拓という目標を持ち、展示会に出展し始めたのが2017年のこと。
しかし最初の展示会での結果は思わしくありません。「バイヤーから反応がない」どころか、「そもそもブースに立ち寄ってくれない」状況でした。
一ケ月後に迫る次の展示会では事態を改善したいと、日置市商工会さんを介してお会いしたのが最初の出会いです。
仕組み①調査で課題特定
試食して「商品そのものは上質。問題ゼロ」と確信しました。
では何が問題なのか?
ブロストの焼豚の問題ではなく、「広く一般の焼豚」が抱える問題だと市場調査から特定できました。「焼豚買いたい」という消費意欲自体が小さく、さらに「パサパサしている」と言った負の印象も伴っていました。
仕組み②イメージを裏切る
ニーズが弱い「焼豚」なので、「従来のイメージを裏切る」必要があります。そこで、「いかにも焼豚」なデザインを一掃、既存焼豚にはない「しっとり感」を視覚化して撮影、ビジュアル戦略の要としました(図❶)。
仕組み③立ち寄り率改善
次いでブース立ち寄り率を改善するため、その写真を展示会ブース背面に用いるタペストリーに大胆に配置しました(図❺)。
仕組み④提案イメージ強化
さらにブースの冷蔵ケース上には「焼豚の食べ方」がわかるPOPを設置(図❻)。簡単に食べられ、丼にもつまみにもなることを伝え、店頭での販売イメージを醸成する狙いです。
タペストリーとPOPで展示会ブースは大きくイメージが変わりました(図❼)。
仕組み⑤試食が成約の鍵
そして試食。そもそも商品力が高いブロストの焼豚です。立ち寄り→興味→試食「この焼豚おいしい!」の流れができた2回目の展示会では、即成約を含め大きな商談成果となりました。
仕組み⑥商談力の会社案内
展示会ツールの導入で商談件数も増えた頃に取り組んだのは商談ツールの一つ、会社案内です(図❽)。コロナ禍でオンライン商談が増えることを見越して、横長型の判型を採用しました。
正しい課題特定から始まるマーケティング
これらの継続したお取り組みの結果、取引先が増えコロナ禍においても増収を継続。鹿児島県産豚は「ブロストの焼豚」となり、全国で愛されています。
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○鹿児島県発行『農業かごしま』(農業改良普及研究会)への寄稿記事の転載
~売れる仕組みづくり~お客様に選ばれるためのマーケティング~
プロフィール
中島秋津子
https://studiok-co.jp/
広島大学卒業後、㈱ベネッセコーポレーションに入社し、岡山本社・東京本部で編集・マーケティング・SP・法人営業・通信販売事業に携わる。2006年鹿児島に転居し創業。「伝える力を会社と地域のエンジンに」を使命にマーケティング&デザインサービスを事業者や自治体などに提供。鹿児島県商工会連合会が運営する天文館・かご市「かごしま特産品研究所」研究員。