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ビオレトロの有機トマトのブランディング事例:鹿児島のデザイン事務所の取り組み⑤

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【事例⑤】有機トマトの生産プロセスを視覚化しブランド確立を目指す

〔会社情報〕
株式会社ピュアリティ&プライム 霧島市国分郡田900-17 有機的管理トマトの生産・卸

❶「レトロプリンセス」の名をもつミニトマト
❷うぶ毛が太く長くヘタも厚い 
❸みっちりした中身
❹蜂による自然受粉
❺ハウスの様子
❻代表の杉山昇氏(右下)とスタッフの皆さん
❼ビオレトロのブランドマークとして提案した3つのマーク案 
❽決定したロゴマーク 
❾❿ロゴマークの使用例
⓫⓬ビオレトロのコンセプトをシンプルにまとめたパンフレット(A4・3つ折り、⓫外面、⓬中面)

同じ農場で働いていた三人が、「自然の力」を引き出した有機トマトの栽培を行うために設立した会社が、今回のテーマとなる株式会社ピュアリティ&プライムさんです。

有機トマトのブランディング

霧島に農場を構えるこの会社から最初にご連絡いただいたのは、2020年夏のこと。同年5月に会社を設立し、トマト栽培を開始したばかりというタイミングでした。
ご用件は「有機トマトの栽培開始にあたり、自社ブランドのブランディングを」というもので、具体的にブランドのロゴマークやパッケージなどのデザイン、そして栽培法などの考え方を伝えるためのパンフレットを作ってほしいというものでした。

仕組み①価値観を明示

あまり農業に詳しくない私でも、〇〇農法といった名前はいくつも耳にしたことがあります。また、糖度の高さ等を売りにした野菜・果物も多く存在します。
そんな中、このトマトの立ち位置を定めるため、コミュニケーションでは「農法の前に価値観」の重視をご提案しました。
具体的な栽培方法の前提となるこの価値観こそブランドの根幹となるもの。仕入れ担当者や消費者の方々がこの価値観に共感してくださることがブランド確立の鍵と考えたからです。

●基本的価値観
✔人と地球とトマトにやさしく、そして美味しいものを。
✔化学ではなく、科学的アプローチ。

仕組み②ブランド名とロゴ

ブランド名「ビオレトロ」は仏語「有機」と英語「古き良きもの」の造語であり、創業時の想いを込めて決定されていました。
 マークは自然の力を活かす農業や霧島などの切り口から3案ご提案し(図❼)、農業神デメテルをメイン・モチーフとした図❽に決定、赤✕白をテーマカラーとして各種ツールに展開しました(図❾❿)。

仕組み③プロセスの象徴化

雑草は刈るか手で抜き、カビには有用微生物で対応、蜂による自然受粉(図❹)など、自然の力を最大化する栽培方法です。
 しかし生産プロセスは農場でしか見ることができません。見えない価値をいかに伝えるか…。
長々と説明するより、プロセスを象徴化して価値を見える形を採用することにしました。
パンフレット(図⓫⓬)で水分・養分を取り入れる「うぶ毛が太く長い」(図❷)ことを強調したのはその一つです。

仕組み④象徴はミニトマト

ビオレトロのミニトマトは「糖度7以上」の規定。パンフレット表紙に緑から赤へと熟すプロセスがわかるミニトマトの房(図❶)を大胆に配置し、ミニトマトの成長プロセスをシンボル化しました。手渡した時には、多いに興味をお持ちいただいているようです。

有機JAS認証と販路拡大

現在3期目、11月後半~6月に安定的に出荷できる生産技術が整い、合わせて有機JAS認証も取得。県内や都市圏からの引き合いも多く、販路も大幅に拡大できる見込みです。

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○鹿児島県発行『農業かごしま』(農業改良普及研究会)への寄稿記事の転載
~売れる仕組みづくり~お客様に選ばれるためのマーケティング~

プロフィール
中島秋津子
https://studiok-co.jp/
広島大学卒業後、㈱ベネッセコーポレーションに入社し、岡山本社・東京本部で編集・マーケティング・SP・法人営業・通信販売事業に携わる。2006年鹿児島に転居し創業。「伝える力を会社と地域のエンジンに」を使命にマーケティング&デザインサービスを事業者や自治体などに提供。鹿児島県商工会連合会が運営する天文館・かご市「かごしま特産品研究所」研究員。