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withコロナ時代の小さな会社の適応戦略-02緊急事態宣言下の食事の調達

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新型コロナウイルス感染症の影響に対して、地方の、小さな、BtoBサービスを提供する会社はどう適応したらよいのか、試行錯誤の記録を「withコロナ時代の小さな会社の適応戦略」というテーマで書き記すシリーズ。
▶最初はここから。
withコロナ時代の小さな会社の適応戦略-0

【目次】
1:デコポンを絞りながら考えた
2:緊急事態宣言下の「食の飽き」問題
3:食の調達手段に関する検索トレンド
4:「アクセントのある保守的食生活」が最大ボリュームではないか
5:重視すべきチャネル
6:今の食のお取り寄せ(通販・EC)に求められるもの

1:デコポンを絞りながら考えた
外食を控えるようになり、会食などは全くなくなり、自宅での調理回数は激増しております。そんな我が家の課題は、3月中旬頃に送っていただいたダンボール一箱のデコポン。少人数家庭においてはダンボール一箱のデコポンを食べきるのは案外大変で、特にうちのように朝早く家を出て帰宅も遅い家庭で食べきるのは至難の業なわけです。自宅でのごはんのたびに食べ続けてもまだ15個残ってる。もう飽きた。皮むくのも面倒。そろそろ皮の艶もハリもなくなってきて、とうに食べごろは過ぎていて、腐らせて破棄するのは避けたいのだが、さてどうしよう・・・。

考えた末、スクイーザーで絞って生ジュースとして飲むことに。一心不乱にしぼりまくって、約1リットルの生デコポンジュースができあがり。すると、抜群に美味しいわけです。濃厚な甘み、とろっとした喉越し、何よりのフレッシュ感。これまでに市販のデコポンジュースを飲んだことはありますが、おそらく過去最高においしいデコポンジュースでした。

2:緊急事態宣言下の「食の飽き」問題
そんなデコポンジュースを堪能した週末、東京に住む知人・友人3人から同じようなメッセージが届きました。「鹿児島のおいしいもの、見繕って送ってくれない?」

そうか、と思いました。緊急事態宣言のなか、外食ができなくなり、スーパーで買い物して自宅調理をしつつ、時折ウーバーイーツやテイクアウトで息抜きをするようなイメージをニュース等を通じて持っていましたが、それでも人は「飽きる」の、だ

東京は世界でも有名なグルメ都市。そこでしのぎを削る名だたる名店もテイクアウトを行っていて、一人前1万円を超すようなオードブルボックスなんかも販売されています。でも、東京の人たちは飽きているんです、コロナ下の食生活に。

そんな名店クラスのお店がつくるテイクアウトですから、美味しさだけだったらお店でいただくのと遜色ないものをお作りになっていらっしゃるでしょう。しかも毎日テイクアウトというわけでもなく、自宅調理もし、テイクアウトも使い、B級的なものからグルメなものまで手には入るのです。でも飽きているんです。

3:食の調達手段に関する検索トレンド
友人たちのメッセージが気になり調べると、SNSでも「自粛飽きた」投稿が多く見られました。食の調達行動はどうなっているのかな?と調べてみたら・・・

手っ取り早い確認方法として検索トレンドを確認。テイクアウトの大幅増加トレンドに対し、ウーバーイーツやネットスーパー、お取り寄せはあまり大きな変化が見えないのが特徴的です。想定としてはどの食手段もけっこうな上昇トレンドにあると思っていたのですが、見事に裏切られました。もちろん、このデータは「検索数」ですから、主に初めての時に利用したいサービスを使う用途が多いと思われ、リピーターの利用頻度はこのデータからは読み取れないことは注意しておきたいところです。

このデータで注目したい点としては、
①自粛のピーク3月26日は、その前日夜に東京都 小池知事が緊急の記者会見を開き「今週末は不要不急の外出自粛」と要請しています。
②テイクアウトが上昇トレンドとなり、ネットスーパーが一時的な小さなピークを迎えたその日は緊急事態宣言が発令された4月7日。
③それぞれの食調達手段の中で上昇トレンドが始まった順番は、ウーバーイーツ→ネットスーパー→テイクアウト→お取り寄せ
④上昇幅は今のところ、テイクアウト>ウーバーイーツ>お取り寄せ>ネットスーパー

4:「アクセントのある保守的食生活」が最大ボリュームではないか
これを見ていると、「ブームはあるけど人の食スタイルは結局保守的」ということが、今回のような国難と言われる環境においても見て取れるように思います。近隣のスーパーやドラッグストアで買って自宅調理、またはコンビニで弁当買うのが基本。ネットスーパーを利用するくらいだったらやっぱり自分で見て選びたいし(ちょっと息抜きも兼ねて)、利用母体は広がりきらない=一般化するほどにはならない(もしかしたらスーパー側のデリバリーキャパの問題があるのかも)。一部のネットリテラシーが高い、時間をお金で買うタイプ(今だと安全をお金で買うタイプ?)の人がアーリーアダプター的にウーバーイーツを利用し始めるがあまり母数としては広がらないまま一定の母数で推移(頻度は別)。だけどそんな食生活を送っていたらだんだん飽きてきて、外食できない分(ちょっと変化付けたいな)と地方からのお取り寄せをし始める、お取り寄せだとスーパーにないものも売っているから。私にはそんなふうに見えるのです、このグラフ。テイクアウトの検索数が上がり続けてきているのも、「身近な所で、知ってる店で、ちょっと違う食事を楽しみたい」気持ちの現われなのではないでしょうか。

そうなると、私の事業領域の一つである「地方の食ビジネス」において、取るべき行動は少し見えてくるように思われます。現在先に緊急事態宣言が発令された7都府県地域に対して食の事業者として何が貢献できるのか。また全国に緊急事態宣言が発令されましたが、鹿児島のそれは東京のそれとは自粛度合いが異なります。いつか、ここ鹿児島でも東京と同じような自粛生活を要請される時期もやってくるかもしれません。その時、このグラフと同じような動きが見られるかもしれません。

5:重視すべきチャネル
注力すべき中心はやっぱりスーパーなど消費者の食調達、フードラインのベーシック・チャネルを重視すべきです。食品製造業はもとより、飲食業においても出来るところから、これら流通チャネルとの接点を模索する必要性もありそうです。その際の選択肢としては、モノ=物販に加え、テイクアウトをそれらチャネルと絡めて提供できる方法を探ることも選択肢でしょう。もちろんその場で食べる飲食サービスと比べ、賞味期限=日持ち・衛生的な製造プロセス・非接触での情報提供(一括表示、人がいなくても売れる伝達力)などの課題はありますが、取り組むなら早いにこしたことはありません。また「一時をしのぐ」ために安価な値付けをすべきではないこともポイントになりそうです。

もうひとつは通販です。この機に急ぎ通販ビジネスに参入する準備を進めている会社もあるし、EC強化の流れは強いようです。その際のポイントとしては、最初に書いた「デコポン1箱は食べたくないなあ」問題のように思うのです。特に製造業であればECで販売・配送出来る商品はあるため、手を加えるにしても0ベース開発に比べたらそんなに時間がかかることではありません。ですが、消費者は「同じものを一箱食べたいわけではない」のです。

総合食品製造業のような会社はほとんどなく、たいてい中心ジャンルが決まっています。一次産業の農家にしても同様です。あれもこれも作っている会社はあまり存在しないのです。ECにおける供給側と需要側の最大ギャップは、ここだという「匂い」がしています。だからといって、地方のスーパーがECしたら売れるのかというとちょっと違いそうです。身近なスーパーにあるものをわざわざ取り寄せたくは無いのです。

6:今の食のお取り寄せ(通販・EC)に求められるもの
答えはわからないながらも条件を書き出してみると…
①身近なスーパーでは手に入らないもの
②冷蔵庫・冷凍庫に入り切るもの
③飽きずに食べ終えられる量(1食分とかアソートとか)
④調理が難しすぎないもの
⑤家族で食べられるもの(こどもも大人も)
⑥でも自宅ではあまり食べる機会がないもの
⑦選択ストレス無く購入決定できるもの

一言でいうと、一日中同じ空間で、固定化された家族とのアクセントに乏しい自粛生活において、各種ストレスなく「食卓に変化がつけられるもの」。考えてみると変化にも、味の変化、情報の変化、家族コミュニケーションの変化いろいろありますね。工夫のしどころはいろいろありそうな気がしてきました。

コロナウイルス対策の動向に応じて、また期間に応じて、テイクアウトのトレンドも上下緩やかな推移を繰り返すのかもしれません。現時点での考察に過ぎませんが、一つの検討テーマとして、継続的に考えていく必要がありそうです。そのあたりも注視しつつ、他のデータやファクトにもあたって検証しつつ、明日からの食品系企業との打合せでは、この路線も含みながら企画を進めていきたいと思っています。