白黒パッケージをどう考えるか~6.5
今日は1テーマ。昨今話題の「白黒パッケージ」です。
状況が刻々と変わっているので、また時間がたてば別の話にもなると思いますが、まずはということで一度まとめてみました。
1:白黒パッケージ問題とは
2026年5月、スーパーの菓子売り場が変わるニュースが流れました。
カルビーの「ポテトチップス」や「かっぱえびせん」から、あの見慣れたカラフルなパッケージが消え、白と黒だけのシンプルな袋に変わるというものです。
2:なぜ、パッケージデザインから色が消えるのか
きっかけは、2026年2月のホルムズ海峡封鎖。中東情勢の悪化によって日本へのナフサ(原油から作られる石油化学製品の原料)供給が不安定になり、印刷インクの原料となる溶剤の価格が急騰。
カルビーさんによると、通常5〜7色を使っていたパッケージを2色に変更することで、溶剤の使用量を削減できるということでした。「資材がない」というより「価格が高すぎて従来仕様では使い続けられない」のが今回もポイントです。
3:パッケージ変更への食品メーカーの動き
この動きは、カルビー以外にも広がっています。
報道からざっとまとめると・・・
| メーカー | 主な対象商品 | 対応内容 | 時期の目安 |
|---|---|---|---|
| カルビー | ポテトチップス・かっぱえびせん・フルグラ 他14品 | 白黒2色印刷へ変更 | 2026年5月25日週〜 |
| カゴメ | トマトケチャップ3サイズ | 外装を透明デザインに変更 | 2026年5月発表 |
| 不二家 | カントリーマアム・ホームパイ 他10品 | 色数削減+写真を減らす | 2026年7月〜 |
| 伊藤ハム米久HD | ウインナー・ロースハム 他4品 | 使用色を従来の半分(3色)に削減 | 2026年7月〜 |
| 日清製粉ウェルナ | マ・マー スパゲティなど乾麺 | 束ねるテープを無地に変更 | 時期未定 |
| ドン・キホーテ | 新PB26品目(水・ティッシュ等) | 白黒PBを新設、水500ml→40円 | 2026年6月〜 |
| イトーヨーカ堂 | 肉・刺し身・揚げ物容器 | 青トレーを白へ変更、蓋をラップに | 2026年5月末~ |
| ファミリーマート | サンドイッチなど | ブランドロゴの白黒化を検討中 | 2026年夏(予定) |
※各種報道をまとめたものなので変更・取止など有るものとして参照ください。
一方、白黒化しないことを明言する会社も見つけられました。
「お客様が最初に目にするのがパッケージデザイン。色を変更しようという検討の段階にもなっていない」
とし、色も値段も現状維持を表明している会社もあります。ブランドの核心を守ることを最優先にした判断と考えられます。
またちょっと立ち位置が違うのがドン・キホーテ。白黒パッケージのPBを新たに立ち上げました。ドン・キホーテは自社約670店舗という販売網を持ち、棚の競争からある意味切り離されているPB商品であることは、注意すべき点です。量販店の棚で他社商品と並ぶ一般メーカーが同じ発想をすることは難しいんじゃないかな、と思います。
純粋にパッケージデザインを行う立場から考えると、色数減など制約は増えたとしても、そもそもパッケージデザイン自体が非常に制約が多いメディアなので、ある程度まではデザイン的には対応できるんではないかしら…と想像しています。とはいえ、こういうことはやってみないとわからないことが多いですからね。
4:地方の食品メーカーが白黒デザインをきっかけに考えるべきこと
ではでは、やっと本題です。
鹿児島始め地方では、中小企業・小規模事業者が担うことが多い食品飲料製造。この「白黒パッケージの波」をどう考えるか。「自社や商品がどのポジションか」によって、変わってくるので、一律的な物言いはできません。
そこを切り分けずに話をしてもすれ違うばかりなので、たとえばということで3つの観点でまとめてみました。懸念点や違いが表出されやすいよう敢えて短文で記載しているので、誤解が生まれたらごめんなさい…なのですが、一つの指針にはなるのではないかと思います。
5:立場別の白黒パッケージの導入について
-①:メーカー商品or小売PB
| 量販店・スーパー卸(外販型) | 自社店舗・PB型(内販型) | |
|---|---|---|
| 棚の競争 | けっこう激しい(他社商品と並ぶ) | 低い(商品規格的にも売場的にもPBは基本有利) |
| パッケージの役割 | 「知ってもらう」「選ばれる」ための入り口 | 「PrivateBrand」として存在の表現 |
| 白黒化のリスク | 視認性・差別化に課題、デザイン次第だが | PBとして認知形成できたらあまり問題ではない |
| 判断の優先度 | 慎重に検討すべき | 比較的柔軟に対応できる |
-②:既存商品or新商品
| 既存商品(圧倒的販路あり) | 新商品(販路開拓中) | |
|---|---|---|
| 認知 | すでにある程度あり | これから作る |
| パッケージの役割 | 「維持・継続」が重要=いつもの | 「第一印象」がすべて=あ!何これ! |
| 白黒化のリスク | 中程度(混乱リスクへの注意) | 高い(着目の点で不利にならないよう慎重に検討) |
| 推奨対応 | 段階的移行・告知で混乱防止 | 可能な限りカラー確保か、白黒を逆手に取る戦略ある? |
-③:短期or中期or長期
| メリット | デメリット | |
|---|---|---|
| 短期 | コスト削減・供給安定・値上げ回避or値上げ幅縮小 | ブランド棄損リスク・消費者の混乱・売場での視認性低下 |
| 中期 | 包材コスト構造の見直し契機 | 競合との差別化困難・ブランドイメージ回復に時間 |
| 長期 | 環境配慮型など包材移行の加速・新ブランド戦略の確立 | カラー回復時のコスト再発生・消費者のブランド離れ定着リスク |
6:地方メーカーが取るべき選択肢
パッケージが担っている役割、会社や商品のポジションごとに慎重に検討すべきことはお判りいただけたんじゃないかと思います。
「大手は体力と知名度があるため、パッケージが変わっても消費者はついてくる可能性が高い。しかし地方メーカーにとっては事情が異なる。」とはとあるバイヤーさんから聞いた言葉。
その真意は、地方の食品メーカーにとって、パッケージがブランドの「顔」そのものであることが多い、ということ。
食品売場の棚でほかの商品と横に並んだとき、商品の特徴をよく表したパッケージにより、それを好むお客様の目に留まるのは歴然とした事実です。それを念頭に置いて、コスト減だけに走らず、ブランドリスクもともに検討いただきたいのが本音です。
また最初にあげた報道における各社の対応も、「白黒か、カラーか」の二択ではありません。
- 完全白黒化:コスト削減・供給安定を最優先。大手の動きに合わせて「時代の流れ」として見せる方法も。
- 色数削減(2〜3色に絞る):ブランドカラーを1〜2色残し、らしさを保ちながらコストを抑える。
- テープ・帯・外装だけ変更:一部はカラー、一部は無地・簡素化するハイブリッド対応。
- この機会にデザインをリニューアル:ブランド刷新の好機として捉える。商品によってはプラスに働く可能性も。
ただ、実際のところ、カルビーさんは自社商品以外にも多くのPB商品をOEM製造されているので、使っている包材のケタが違うはず。カルビーさんほどの量を印刷すれば「節約」にもなりますが、数千部程度だと見積を見て(あんまり変わらない…)ことも出てくると思います。もちろんインクや溶剤そのものの枯渇となれば別の話にはなりますが。
7:STUDIO K的に思うこと
今食品メーカーを取り巻く課題は印刷費・包材費だけではありませんよね。
たとえば人件費と採用難。
→今まで手作業でしていたことを外注化・機械化することも必要です。
たとえば管理コスト。
→売れ行きが少ない・赤字商品を見直すなど商品ラインナップの見直しにもベストタイミングです。
たとえば既存包材およびパッケージデザイン。
→これは本当に最適なの?シール何枚も貼って結果コスト増になってない?売場でお客様と出会えるデザインになってる?
いろんな問題が発生している今、既存のものをゼロベースで見直す好機ととらえることもできます。・・・と自分で思いついたように書いていますが、実はお客様から「よい機会だから包材もデザインも全部見直す、変えたほうがいいもの・変えるべきでないもの、分析してほしい」とのご依頼で気づいたことです。
容器包装無しではどこにも移動できないのが食品。
ほんとうに容器包装あってこそ、なんですよ。
今こそ容器包装と本気で向き合うタイミング、にするのも悪くないと思います。